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読書濾液の貯水箱

本を読んでいたことを忘れないために

「怒り」がスーッと消える本 を読む

読書 コミュニケーション

 
 1 はじめに 怒っていること

 きれいにまとまった、わかりやすく良い本だった。
 この本を読む前に、自分が本当に「怒っている」のか自信がなかった。怒っているとすれば、それは自分自身に対してなのか。この鬱屈とした感情は、自分への怒りが原因なのかとかである。
 ひねくれているだけなのはわかるが、素直に言えば本当に「どう感じているのか」がわからなくなっていた。疲れてるだけなんだけれども、精神が不安定で失敗を重ねていた。どうすればこの癇癪に近い反射的・本能的な攻撃衝動を押さえられるかどうか、という点で、この本を見つけることができた。
 筆者は「対人関係療法」に精通しており、一度衆議院議員になったことがあるらしい。専門向け一般向け問わず、かなりの本を出版しているらしい。

 2 怒りのメカニズムとその対応方法

 当書では、ステップを七つに分けて怒りの役割、原因を説明する。その後、どうすれば怒りに振り回されないか、コミュニケーションで怒りを持たずに済むのかという対応方法について述べている。

 怒りの原因として、作者はいくつか例を上げている。

 ① 予定狂い
 「○○するはずだったのに」という、自分が思いこんでいたことと異なったことで、被害を受けて困ってしまったため、怒りを抱く。
 ② 心の傷
 「相手との関係」の中で、自分の心が傷ついているために、相手を加害者と考え、怒りを抱く。
 ③ 我慢
 全く知らない他人に対して「どうしてこんなことをする(しない)んだろう」と考えるとき、「自分はちゃんとしているのに」「自分は我慢しているのに」と考えて、怒りを抱く。

 こうした事例から読みとれることとして、筆者は「自分が被害を受けた、困った状況だということを示すシグナル」が「怒り」であるとする。
 ここで重要なのは、あくまでもシグナルであって「本当に自分が困っているのか」「本当に被害を受けているのか」ということとは別問題である、という視点である。あくまでも人間の脳が反射的・本能的に考えることであり、必ずしも事実とは一致しない、という点に「怒り」への対処法がある、と筆者は考えるのである。
 
 筆者が専門としている対人関係療法の見地からは、「対人関係のストレスは『役割期待のずれ』から発生する」という説明がされる。これは、相手に本来期待すべきでないことを期待し、求めるべきでないことを求めているために、「うまくいかない」「思ったようにならない」というストレスを生じる、ということだ。筆者は、このずれこそが「怒り」の原因、つまるところ「自分が被害を受けた」と感じる原因であるとする。
 筆者は「他人が出来ないことに期待すべきではない」「他人は変わることはあっても変えることはできない」という考えから、「本当にしてほしいことは何か」「相手は本当は何を期待しているのか」ということを考え、それらに併せて実現可能なすり合わせを行うことで、ずれがなくなるとする。

 他にも「評価は暴力である」「相手を主語にしない」「相手を変えようとしない」など、怒りを遠ざけるための様々な手法について、具体例を交えてわかりやすく説明を行っている。主観的には、どれも頭に入りやすく、また実践も容易で効果を強く感じられた。

 3 おわりに あとはすべきことをするだけ

 怒りという感情があることを認識し、適正に対処することで、はじめて自分をコントロールすることができる。自分自身、傷つくということでいっぱいになっていたふしがあったが、当書を読むことによって、少しずつ対処の方法がわかるようになってきたと思う。
 当書はいわゆる「アドラー心理学」と非常によく似た発想が多い。「相手を変えることはできない」という点や、「自分自身が感情への評価を決めることができる」など、いくつか共通点が見られる(アドラー心理学は「心の傷(トラウマ)」を否定するので、その点では一致を見ない)。「嫌われる勇気」は読んだけれども、実際のところ動くことが出来なかった自分にとって、こうした具体的な対処法があると言う点で、実用的で助かった。
 自業自得であったとして、自分に非難されるべき事態があったとしても、傷つくことは傷つくのであり、それを理解した上で対処すべきである。一番の学びであった。