読書濾液の貯水箱

本を読んでいたことを忘れないために

 「レジリエンス」の鍛え方 を読む



 1 はじめに 「タフガイ」

 タフガイ、という単語を一番最初に知ったのは「ドラクエ3(GBC版)」だ。いわゆる「タフなガイ」という意味ではなく、それ単体で何らかのカタカナ語かとして学んだ当時の私は、後々にその意味合いを学ぶことになった。
 実際のところ、今の自分が「タフ」かと言われると断じてNOだろう。もし今の自分を「タフ」だなんて評価する奴がいたら全力でそうではないことの理由を言い連ねそうなくらいには、ひ弱である。

 「レジリエンス」という言葉はもともと環境学における、生態系が環境によって変化させられることに対する「復元力」から来ているらしい。つまるところ、「元に戻る」「回復する」力のことを、新しいビジネスマンの身につけるべき力の一つとして新しく見つけた、ということなのだろう。
 正直このブーム事態、すでに終わっているのやら世情に疎い自分にはわからないのだけれども、とりあえず、学べることはどんなことからでも学ばないといけない。
 読書だろうとなんだろうと、何かから何かを身につけなければ、生き延びる力は身につかない。
 身についているかは知らない。

 2 レジリエンスの技術

 当書においては、レジリエンスはおおよそ7つの技術に大きく分けることができるとする(いやな予感がしたが、まぁそれなりに杞憂だった)。
 特に私が参考にしたいと思ったのは「ネガティブ感情の悪循環から脱出する」「役に立たない『思いこみ』をてなずける」というあたりの技術だった。
 「ネガティブ感情の悪循環から脱出する」という技術においては、まず「繰り返すこと」が問題であるという視点が重要だ。単純にネガティブ感情を感じること、それ自体は人間の自然な反応であり、それを止めることは感情を麻痺させることにつながる。感情の麻痺は幸福感などにはつながらず、鬱病などのメンタルヘルス不調にもなりかねない、ということで、重要なのは「繰り返させないこと」としているのだ。
 繰り返させないためにはどうすればいいか、答えはシンプルで「ストレスを解消する」ということを述べている。運動をしろ、呼吸を整えろ、集中できることに身を投じろ、などなどあまりにシンプルで身も蓋もないと思うが、間違いないだろう。しかし、これだけでは物足りない。
 筆者はこれに付け加えるようにして、「役に立たない『思いこみ』をてなずける」という技術を提示している。これはいわゆる「刺激と反応の間を意識する」という最近流行の解決策を提示している。やはり、その感情が生まれた理由を理解し、その上で本能的反射を防ぐものである。
 ところで、当書はその実践的比喩が面白い。ネガティブな本能的反射群を「犬」として呼ぶのである。たとえば、他人が褒められているシーンを見るという刺激に対して、「自分はダメだ」「他の人はすごい」という風な考え方が浮かぶことを「自虐的な犬が頭の中で吠え立てている」と考えるべきだ、としているのだ。そして、「犬を飼い慣らす」技法を提示しているのである。
 この技法の優れたところは、「客観的に問題を分離することで対処を行いやすくする」というところだろう。あくまで「自分」に問題があるのではなく、「犬」のせいにするのだ。字面は酷いが、本質的でもある。過度な意識の変容を招くような悪い思考の癖は百害あって一里なしとし、それを改善するために必要な技法を学ぶためには、それが一度自分から切り離されないといけない。自分そのものを改善するよりは、非常に直球的で、解決のための本質をとらえている、良い考え方だと思う。
 他にも犬の種類は提示されているが、対処の具体的すぎる方法が書かれていないのが少し残念だった。

 3 おわりに ないないづくし
 一応、七つのうち二つだけを紹介して終わらせるが、書評としての立場を考慮したというよりは、単純に自分には縁遠い話だったというのが本音だ。
 たとえば「自分の『強み』を生かす」という章では無料の強み発見ツール「VIAーIS」を紹介されているのだが(検索すると使える)、私がやってみた結果「謙虚」という何がいいたいのかよくわからない感じになったので、なんだかつらくなった。
 「こころの支えとなる『サポーター』をつくる」などは、「それが出来りゃ苦労しねえよ!」という心の叫びでまともに読むことができなかったので、あまりいい読書が出来なかった。
 Kindleのセールに乗じて書った本として非常に有益ではあったが、後半に行くにつれて精神衛生が悪化した。それはおおむね私の責任であるので、本は良い本であったと思う。

 学習性無力感に勝ちたい。