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読書濾液の貯水箱

本を読んでいたことを忘れないために

「小説家になろう」を読んでいました

 読書という習慣を身につける必要のあった頃、初めて読むべき本は「星新一」だと皆が言うので読んでいましたが、その次辺りに読んだのはライトノベルでした。

 

  特に「とある魔術の禁書目録」は新約の頃まで読み耽って、いくつもの黒歴史を生み出したのは趣味である創作の端緒でもあったような気がします。(新約の頃からは疲れていて読んでいない)

  ラノベは十分好きな人間ではあったのですが、大学に入り、文学に触れるようになってからは特に避けるようになっていました。ライトノベルが通常の文学の劣化であるというような偏見を気にしたことも多少はあったかもしれませんが、それ以上に「誰もが知っていなくてはならない教養」が、あまりにも高く積み上がっているのを眼前にして、それどころではなくなっていた、というのもあったと思います。

 文学の歴史や時代背景、入念な周辺知識や操作、論理的なバックアップや目をそらさせるレトリック。面倒くさいと思うようなことをたくさんたくさん積み重ねて、それでいてやっと初めて、何か掴めそうな気がするくらいの、文学に対する決闘の如き挑戦というものは、私にとって甚だ努力の要るものでした。カエルは解剖することによって死ぬし、文学も解きほぐしたからといって一度頭に入った先入観は消えてはくれないですし、それが教わった解きほぐし方だと尚更です。純粋に楽しむということについては、自分は苦手でした。そもそも純粋ってなんだとかそういうのはともかく。

 

 それで、最近になって精神的な回復も兼ねて、ライトノベルを読みたくなったので、「小説家になろう」で読みました。このサイトはいわゆる「テンプレ」で有名ですが、もともとJIN-仁-とか好きなタイプなので、舌を肥やさない程度に飢えさせておいた感覚で、がっつり読みました。1ヶ月は読みました。まだもうちょっと読みます。

 面白かったものを以下に羅列しますが、有名所しか読んでいない(と思う)ので、ご了承下さい。

 

◯北の砦にて

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 「テンプレ」というのは「異世界」「転生」「チート」「ハーレム」の四要素(のはず)ですが、これは多分前者二つだけです。

 人外転生ものはたくさんありますが、大抵ヒトに(形だけでも)戻ります。これはヒトになれるのにあんまりならないので好印象です。可愛げがありながらも描写が丁寧でとても良いです。

 

◯クラスまるごと人外転生

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 人外時の精神及び肉体との乖離や、社会的な関係性の乖離等を、比較的しっかり書いてくれている数少ない作品の一つですね。最大のテーマとまでは言いませんが、副次的なりにもしっかり突き詰めているように感じます。

 ただ、クラス全体流離ってやっぱり昔ながらの伝統なんですかね。めちゃくちゃ一杯ある……

◯蜘蛛ですが、なにか?

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 ランキング8位の大作で、これで概ねどういうものが今流行ってきているのかはなんとなくわかりました。多分その前にスライムとかがあって、これの後釜に最近だと地龍やら竜の卵やらがあるんだと思います。今の定形を形作ってるのはこれなんでしょうかね。ランキングに載るだけ有って魅力的な作品です。これも一応クラス全体流離です。

 

◯異世界転移バーテンダーの『カクテルポーション

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 発想とアイディアの勝利としか言いようがないです。カッコいいものとカッコいいものを掛けたらカッコいいに決まってるじゃないですか。しかも結構設定や人物描写が固まってるのでオススメです。

 

◯本好きの下克上

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 圧倒的な知識量から構築された世界設計と繊細な人物描写、重厚な歴史と特異な文化を持つ異なる世界を主人公と一緒に読み解きながら、多難な人生を歩んでいく。「異世界」「転生」という要素を正統に王道として踏破している間違いのない傑作です。個人的には、なろう最大の傑作です。

 エンターテイメント性を全く捨てず、それでいて人の機微を詳細に捉え、失敗もして、成功もして、横目で見てハラハラしながらも一日一日を生きている主人公の成長を肌で感じるような、そんな作品でした。転生モノでは忘れられがちな家族愛を、この上なくしっかりと書く作品です。

 

◯幻想再起のアリュージョニスト

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 明白に今までのものと毛色の違う作品ですが、これもまた間違いのない傑作です。個人的には、なろうの中で二番の傑作だと思います。二番目というのは、この技術を真似ても万人受けしないからであろうということから来ているだけなので、好みとしてはこちらのほうが好きです。

 繰り返される引用と引喩、作品の内からも外からも引きずり出しては物語を作り上げ、さらに物語の中で物語を作り、物語が持つ力で物語を進めていく。レトリックを組み上げてレトリックで突き崩し、作品のプロットがあるのならプロットという概念を組み込んで物語を組み上げる。

 端的に言えば、「ああ、この台詞はここで生きるのか!」「この設定がここに来るのか!」というような、背筋がぞくりとする感覚を何度も何度も繰り返し味わうことのできる大作です。ただ、一定程度ある各部ごとに作品が百八十度くらい変わるので、悪く言えば毛色が合わないと辛いですし、良く言えばせめて二部までは読んで欲しいです。

 この作品はかなり作品外からの引喩が多いので、いろいろ知っているとより楽しめるでしょうが、推薦図書 - 幻想再帰のアリュージョニストWiki Wiki*という記事ができるくらいには多量のものがあるので、あんまり気にしなくてもいいと思います。

 

◯蝉だって転生すれば龍になる

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 今回上げる作品の中で唯一の短編です。短編としての完成度は凄まじく高いです。こんな作品を書けるようになれたらいいな、と思うタイプの、敬意を評すべき作品でした。涙が止まらないというのは本当に久方ぶりでした。

 

 今回は以上です。

 そのうちしっかり作品を作らないといけないなぁ。