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読書濾液の貯水箱

本を読んでいたことを忘れないために

最近読んでいた本について(8月~10月)

 リアルが忙しい、という言い訳はあまりにも陳腐ですが、他に申し訳が立ちません。

 更新が半年以上無い、ということだけは防ごうと言うことで、単純に読んでいた本を列挙、簡易的なレビューを行います。

 簡素な内容になることをお許し下さい。

 

 思考の紋章学(澁澤龍彦

思考の紋章学 (河出文庫)

思考の紋章学 (河出文庫)

 

初期のエッセーから『胡桃の中の世界』に至る著作の中で、著者はもっぱらヨーロッパの文学や芸術をとりあげてきた。本書においてその関心は日本の古典や文学にも向けられ、迷宮、幻鳥、大地母神などをテーマに、東西の文学作品に通底する心的パターンをめぐって、自在の引用と言及を展開する。

 性と結びついたモチーフらの共鳴と人間の真相

 文学作品や神話において持ち出されるモチーフは様々なものが存在する。「迷宮」、「儀式」、「時計」、「円環」。様々なモチーフと、それらを取り扱う物語を通して性の在り方と人間心理を読み解いていくエッセー集。

 例えば、「付喪神」の生まれた理由は「地獄」の概念が希薄化したことによるものである、という推察がある。

器物の妖怪は、このような前時代の地獄の形而上学の崩壊した後の空虚に乗じて押し寄せた、いわば「物」の巻き返しではなかったかと思われる。

一つの形而上学がつぶれたからといって、人間が油断をしていると、「物」はすぐ逆襲してくるのだ。

  こうした「物」の逆襲を見る人間の精神にフェチズムを鑑みる、というのも個人的には強い納得感を覚える。

 

金融の世界史(板谷敏彦)

金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書)

金融の世界史: バブルと戦争と株式市場 (新潮選書)

 

シュメール人が発明した文字は貸借記録の必要に迫られたものだった。ルネサンス期に生まれた銀行・保険業大航海時代は自由な金融市場をもたらし、国家間 の戦争は株式・債券の基を創った。そして今日、進化したはずの国際市場では相変らずデフレ・インフレ・バブルが繰り返される……人間の営みとしての「金 融」を通史として俯瞰する試み。

 経済の仕組みの積み重ねが歴史である

 全体を通して、お金の回り方がどういった流れを積み重ねてきたのか、という歴史を、様々な事例を通して簡潔に説明してくれている一冊である。資産としての貨幣は、鋳造か鍛造かによってどのような違いがあるのか、国が戦争をする時のお金はどのように徴収されたのか、株式会社の始まりはどのようなものなのか、等々のお金の流れの歴史を教えてくれます。

 改定に沈んだ石貨の価値が認められるのは物語のためである、などのちょっとしたエピソードなどもあり、面白く読むことが出来ました。

西洋学事始(樺山紘一

西洋学事始 (中公文庫)

西洋学事始 (中公文庫)

 

紋章学、占星術、古銭学、美味学、詩学…これら「西洋学の裏通り」を探索することで、ヨーロッパの歴史・社会・文化に通底する西欧思想の原形質をつきとめ、時代の風化に耐えぬく堅固で重層的な西洋的近代知の存続を確認する。西洋学の愉悦にひたる一冊。  

西洋において積み重ねられて、消えていった『学問』との邂逅

 たとえば占星術、などと言えば星占いなどが思い浮かぶものであるが、たしかに歴史上、星を読み解くことが重大な意味を持った時代があった。たとえば系譜として、己の家の祖に誰がいるか否かによって、社会を生き抜く力が大きく異なる時代があった。

 それらが重大な価値を持つのであれば、それを学ばなければならないことは自明であり、それ故に、そこに学問は成った。そこに積み重ねられてきた学問としての紋章学、古文書学、カノン法、等々の存在から、現代に残っている学問は数少ない。

 しかし、そこには確かに学問として成立していた何かがあり、その学問のために知が集積され、過去の優秀な人々らの知性がそこに凝縮されている。そうした学問としての積み重ねが、たとえその内容が全く意味のない間違いであったとしても、今の学問の礎であることに疑いはない。古代より西洋において発展し、消えていった数々の学問のエッセンスを凝縮した一冊。